大輔は少し笑って、振り返った。

最初に目に入ったのは、見覚えのあるピンク色の傘だった。

一人の女性がこちらに向かって歩いてくる。

百合だ。

左手には閉じられた黒い傘を持っている。

俯いて歩いていた百合が顔を上げ、大輔に気付いた。

そして、メテオのドアに掛けられている札を見る。


「あれ、今日はまだ開けないの?」


百合は首を傾げて大輔を見る。

大輔に一瞬の迷いが生じる。

大輔は今まで、百合に嘘を吐いたことはなかった。


「ここ、年中無休じゃなかった?」