背中の中央まであったストレートロングの髪を、美容師はもったいなさそうに眺めた後、綾の肩のラインに合わせて、ばっさりと切り落としていった。

そしてさらにハサミを入れ、ショートヘアに変えていく。

鏡の中の自分の姿を綾は真っ直ぐに見つめた。



美容室を出て駅に向かい、ボストンバッグを二つ持って綾は下りの電車に乗った。

車窓にすっかり変わった自分の姿が映る。

この何年間で以前より痩せてしまった。

短くなった髪を撫でてみる。

まるでやせ細っている少年のようだ。

こんな姿なら誰も愛人にしようとは思わないだろう。

とにかくこの地を離れたかった。

行き先は決めていなかったが行きたい場所がある。

恭司と初めて一緒に迎えた朝を、綾は思い出していた。