恭司は綾にタオルを渡し、その手で綾の短い髪から落ちる雫を触った。


「綾と携帯電話でしか連絡つかないような中途半端なことしていたことをさ」


綾は俯いて、受け取ったタオルで髪を拭き始めた。


「それを言うなら、私は恭以上に間抜けだよ。恭の電話番号をアドレス帳に書いておけば、こんなことにはならなかったもの。今までずっと後悔していたの。自分の間抜けさに嫌気がさしたもの」

「綾はどんな七年間を過ごしてきたの?」


恭司は微笑みながら綾の顔を覗き込んだ。


「イラストの勉強を本格的にしてきたよ。学校に通って卒業して。周りの人はほとんど私より年下で、馴染むのに時間が掛かったけれど、講師の人が、比較的年が近くて――」


そこまで話して、綾は彼女に言われた言葉を思い出してしまい、言葉に詰まった。