仕事を紹介された時は本当に嬉しかった。

三十路を過ぎてやっと専門学校を卒業したものの、イラストの仕事が見つからず、アルバイト生活の毎日は経済的にも辛かった。

専属での仕事がもらえるかも、と真摯に打ち込んだ仕事を評価されて充実感さえあった。

それなのに、こんな裏取引を出されるとは。

どんなに仕事が欲しくても、そんなことはしたくない。

ふと、恭司の顔が浮かぶ。

そんなことをしてしまったら、二度と彼に会えなくなる。

絶対にそんなこと出来るわけがない。

そこまで思って、綾は苦笑いをしてしまった。

私はまだ彼に会える日が来ると思っているんだな、と気付いて。