「確かにお前の母親に俺は惚れてたよ。いや、今も惚れていることに変わりはないな。結婚するとしたらこの女以外考えられないだろうと、今でも思うよ」


自分にとっては母親以外の何者でもない人が、恋愛の話に出てくる。

母親のことを女として話している圭吾に恭司は違和感を持った。


「だが、俺は結婚をするタイプじゃない。自分のことはよくわかっているさ。やりたいことをやりたかった。頭の中はいつもそれだけ。好きな女のために何かを諦めるとかは絶対に出来ないという、まぁ変だけど確信があったから、気持ち自体、伝えてない。だからこそ、お前の親父とも普通に付き合えるし、そのおかげで彼女が幸せに暮らしていることが良くわかる。指輪はな、俺が自分の夢と結婚したようなものだってことさ。これをしていると都合がいいんだ。どんな女と付き合っても本気にならないで済むからな」