「綾さん――。大輔さんっていつからあの人のこと、綾さんって呼ぶようになったのかなぁ」


胃の辺りから込み上げてくるような苛立ちを百合は抑えることが出来なかった。


「綾、綾、綾って。恭も大輔さんまで、いったいなんなのよ」


大輔は百合が綾の存在を受け入れられないことを強く感じていた。

今、どんな言葉を口にしても、彼女の気は治まらないだろう。

自分でも百合に対して、ここまで冷静になってきていることを大輔は不思議に感じていた。

心のどこかで、何か綾の力になれたらと思ってしまう自分にも気付いていた。

ただそれが同情からなのか、違う何かの感情なのか、大輔自身にもわからなかった。