「ヤスさん、俺も今日は帰ります」

「そっかぁ、明日もあるしな。お前らも疲れてるだろうし――」


小さく頷きながら言った康則は、すぐ傍に居た百合を見た。


「百合ちゃんも帰ったほうがいいな。送ろうか」

「ヤスさんがですか?」

「あ、いや、そっか。恭司がいいよね。恭、悪いけど百合ちゃんのこと送ってくれるか?」

「あ――」


恭司は大輔を見たが、彼は表情一つ変えず椅子を運んでいた。

綾を自分に会わせてくれた大輔の想う人は、百合であることを恭司は知っている。