話しながら、恭司はなんとも言えない喜びが自分の心の中を満たしていくのを感じていた。

こんなにも綾を近くに感じる。

今までの七年間、空気を掴むようなあやふやさの中で、記憶にすがることでしか感じることの出来なかった存在の綾と、今こうして話していることが嘘みたいだった。

しかもその内容は同じ店で働くことから生まれる会話である。

それだけでこんなにも近く感じることが出来るものなのだ。


「――こうやって、恭の声を電話で聞けるのって、七年振りなんだね」


同じことを感じていたのか、綾がしみじみと言った。


「そうだね。電話で声が聞けるって、良いことだ」

「うん。本当に良いことだね」


電話越しにでも、綾が肩を竦めて笑っている姿が思い浮かんできた。