上野を車に乗せると、七年前のあの日を思い出す。

記憶とは皮肉なものだ。

忘れようとしても条件が重なれば、鮮明に思い出してしまう。

上野を初めて車に乗せた日は、あの人が初めて車に乗ってくれた日でもあった。

あの時後悔したことが、今になっても自分の行動を慎重にさせる。

俺は上野の手を取っていいのだろうか――。

だが、今でもどこかで期待している。

また、綾と出会える日が来るかもしれない。

自分にとって本当の相手は綾であるという想いが未だに捨てられないのだ。

そこまで考えを巡らせて、何年経っても思考回路が同じ自分に恭司は苦笑いをする。

十八歳の青臭い自分の想いが、二十五歳の自分の心を支配し続けているのだ。