…ね…こ…?
「……は?」
あほみたいな声が口からこぼれた。
だって…ネコって…
人間じゃ…なかったの…?
「…馬鹿馬鹿しい」
思わず自嘲気味な笑みを浮かべる。
ネコ?何の冗談よ…
つくならもっとまともな嘘つきなさいよ…
やっぱりコイツ…幽霊なんかじゃないんじゃない?
「あの日は寒かったね」
おもむろに、シロが言った。
『あの日』
シロの言ってる…去年の冬のことだろう。
「僕は何人かの男に黒い袋に入れられて捨てられた
何回も殴られて蹴られて…痛かったなあ
でも君はそんな僕を拾って、泣いてくれたね」
スラスラと言葉を紡いでいくシロの唇。
嘘だ。
嘘に決まってる。
でも、シロの言葉一つ一つはまるで、本当にその場にいたみたいだった。
あのとき…
私とネコの他に、あの路地裏には誰もいなかった。



