俺は音のした方に走った。

そこには追い詰められた両親がいた。

怪我はしていないみたいだ。

「母さん!!父さん!!!」

パアァーン…

…灰色のアスファルトに赤い血が流れていくのが見えた。

人間の血ってこんなに鮮やかだったんだ…。

「雅章!!」

母さんの声で現実に引き戻された。

組員から拳銃を奪い取ると組員は逃げていってしまった。

…腹が熱い。

触ると温かい血が手を濡らした。

あぁ、撃たれたんだ…俺……。

「雅章!!しっかりしろ!!」

あ…親父だ…。

追いかけてたんだ…。

…彩花も吹雪もいる…。

「雅章!死なないで!!」

薄れ行く意識の中、吹雪の泣き顔を見た。

…泣かないでよ吹雪。

笑ってよ…。

僕は君に笑ってほしいんだ。

涙なんていらないよ。

空よ…

彼女の代わりに泣いてくれないか?

涙を彼女の好きな雪に変えて彼女を笑わせてくれ。

最後に彼女の笑顔が見たいんだ。

泣かないで…

笑ってよ…

雪の涙で…

「笑ってよ…吹雪…」

「うん!!うん!!笑ってるよ!!だから死なないで!!!雅章!!」

もう、手が上がらないや…

吹雪の涙…拭ってあげたかったけど…

もう、無理みたいだ……

ごめん……ありがとう…

「雅章−!!!」




それから数年後…

「雅章。私、蛍(妲鬼)と結婚したよ。蛍が組長をやっているんだよ。子供も出来たし、幸せだよ。ねぇ、雅章。子供の名前ね、蛍と相談して貴方と同じ雅章にしたんだよ」

「吹雪!!用意出来たか?」

「まま−!!早く!!」

「うん。行きましょう蛍、雅章」

「ねぇ、まま。あの話の続き教えてよ−!」

「うん。あの後、雅章は公園でまた私に告白してくれたんだよ。私はすっごく嬉しかった」

雅章。

忘れないよ。

雪が降るたびに貴方が降らした季節はずれの雪の奇跡を思い出す。

貴方が起こした奇跡は語り継ぐよ。

『雪の涙』を…