背後から聞こえて来たその声にヒヤリとする


嘘だろ

「早過ぎんだろ…」


「ねぇ、何してるの?」

先程と声のトーンを変えずに問いかけて来る

これはかなりキレてるな

「あー…いや、別に。ちょっと俺の相談に乗ってもらってただけで」

「相談に乗るのにこんなひと気のない場所に来る必要があったんだ」

「…」

「よっぽど重要な相談だったんだね」

「あ、あぁ…」

「良いから早く叶斗の肩からその汚ない手をどけろよ」

雰囲気が変わった
先程とは全く違う、低く唸るような声音

それに又、あの鋭い目つき

(コイツ、いつか人を殺すんじゃないか)


そんな考えをしてしまう程に今の貢は恐ろしい


俺は急いで叶斗の肩から手を離す

「ねぇ、叶斗」

「…」


「何でこんな奴に着いていったの?」

「ちげぇよ。着いていったんじゃ無くて俺が無理やりーーー…」


「うるっせぇなあ!!!」

一際大きな声を出した貢に俺は唖然とする


「お前には聞いてねぇんだよ。俺は叶斗に聞いてんだよ。
なぁ、叶斗、俺を見て?ね?後でコイツは俺が消しておくからさ」


叶斗が貢に近寄り抱き締める

「だめだよ、貢…鷹を消したりしたら」

「何で?アイツ、俺の側から叶斗を引き離したんだよ?それに汚い手で叶斗に触れた…それなのに、それなのに消さない理由なんてあるの」

俺の目の前で繰り広げられている会話が分からない

消すとか消さないとか、普通に考えておかしいだろ

何でこんな平然と話してられるんだ

それに、叶斗の方から抱きしめた?

叶斗は貢の事が嫌なんじゃないのか?


もう俺の頭の中は疑問符でいっぱいだ



「だって…鷹のお陰で貢のその美しい姿を見る事が出来たんだから」




そう言って微笑んだ叶斗の顔は、今まで見たどんなものよりも歪んでいて、妖艶で、綺麗だったーーー…