森口は席を立つと廊下へ出てきた。
「ちょい作倉、来い」
「えっ?な、何なん?」
ガシッと腕を掴まれ、振り払う余裕もなく人のいない階段へ連れてこられる。
「お前、動画の話はすなや」
立ち止まって私を見下ろす森口が言う。
言いながら不機嫌な顔をするから、私も微かな苛立ちを覚え始める。
「はぁ?ええやん別に。音楽なんやろ?」
「音楽やけど誰にも言うな」
「じゃあ動画見せて。私にだけ」
少しだけ勝ち誇ったように鼻を鳴らしてみる。
だけど森口は、分かったとは言わなかった。
「見せるかい。俺のプライベートにまで入ってくる気か?」
プライベート?
何を言ってるんだと疑問に思ったとき、森口が"男"だということを思い出す。


