「はぁ…」

なんで来ちゃったんだろ。

ショウにバレちゃうかも知れないのに。

ショウに捕まったんだな。

そう思って黒いドアを開けた。

「フフ」

「……」

「あなたはやはり面白い人ですね」

そんなに面白いか?

ショウに昨日の夜、あったことを話した。

僕にはショウの気持ちがわからない。

「だって正直に話しますし、来るんですか ら」

約束したし。

あ。

でも一方的に約束させられたのか。

「では話を戻しますね」

「うん」

何を話すんだろ。

「あなたはこの図書館を何時に出ました か?」

「確か、8時…」

「嘘つきですね。バレるってわかって言っ てるんですか?」

え?

説教!?

「私はその時間はもう寝ています」

はやっ。

8時にはもう寝てるとか。

「あちらには何時についたんですか?嘘は なしです」

目をつぶり、僕が話すのを待っていた。

「……」

「覚えてるでしょ?」

まだ目をつぶっていた。

「9時です」

「それは本当ですね」

「はい」

僕、犯罪者みたいじゃん。

「確か、ここを出たのは7時くらいでし た。その間、何をしていたんですか?」

「……」

うぅ。

昨日のことは忘れたいのに。

「女ですね」

「へ?」

「あなたのカバンから何か出てますよ」

「あ!!」

僕のカバンから手紙がひょいと顔を出して いた。

やばっ!

「ラブレター…」

「……」

「やっぱりあの本の主人公ですね」

ショウはそう言うと立ち上がり、どこかへ 行った。

「はぁ…」

ショウが見えなくなったのを確認して、机 に突っ伏した。

やっぱり来るんじゃなかった。

もうバレバレじゃん。

てか。

女に会ってんのバレても関係ないよな?

別に彼女じゃないのに。

何、焦ってるんだろ。

バンッ

机に重たいモノが置かれた。

うわ。

辞書みたい。

「この本の主人公です」

本の題名は“愛の罠”。

「愛の罠?」

「読めばいいです」

ショウを見たら無表情だった。

「教えてよ…」

こんなの読みたくないよ。

辞書を読むと同じだし。

「むー。その顔はずるいです」

そう言って椅子に座って話し始めた。