「……」

「……」

自分からひきとめたくせになんで話さない んだ?

彼女はうつむいていた。

「……」

どうしよう。

「あなた……」

そういえば。

名前が無いんだ。

「?」

彼女は顔を上げた。

うぅん。

名前をあげようかな。

どんな名前がいいのかな?

「二人であなたの名前を決めませんか?」

「名前?」

彼女は首をコクンと可愛らしく横に曲げ た。

可愛い。

「うん…」

ミミ?アズサ?アサリ?ウミ?モモ?……

もうわけわかんない!!

「私、名前いりません」

「迷惑でしたか?」

「いえ。どうせ死んじゃうんだもん」

うつむいて言った。

死ぬ?

「どうして?」

「別に…」

死なないでほしい。

初めて会った人は死んじゃうなんていやだ な。

「ショウはどうですか!?」

「え?」

「生きるって書いて生!!」

「いりま…せ…。男の名前みたいです」

生きてほしい。

そう思って言ったのに。

「いいじゃないですか!!ね?」

「……」

ショウ(仮)は考える。

すごい考えてくれていた。

「しょうがないです。私はショウになりま す」

怒ってる顔で言った。

「やった」

別に頼まれたことでもないし、やらなくて はならないことでもないのに。

なんでやろうと思った?

なんで喜んでる?

「あなたは面白い人ですね。さっきまで読 んでいた本の主人公みたいです」

苦笑いで話す。

「どんな本ですか?」

「教えません」

人差し指を口の前にやり、にやりと微笑ん だ。

「あなたはきっと主人公と同じです。明日 も来てあったことを話していただけません か?」

「なんかやだ」

「拒否権なんてありませんよ?ではさよな ら」

なんかいっきに決まった。

変なことに巻き込まれてる?

ショウは本棚と本棚の間に入っていった。

また本を読むのかな?

そろそろ帰ろうかな。

そう思って紫のドアから出た。