二人の女AとBがいました。

二人は仲良しでした。

というのは表向き。

二人はお嬢様なのです。

「お久しぶり。Bさん」

「あら。最近、見ないからAさんは亡く なったと勘違いいたしましたわ」

「私を殺さないでくださいな。ただ、風邪 をひいていただけですわ」

「それは。大変でしたわね」

「えぇ」

「企業の方も大変ですわね」

「……そんなことございませんわ。繁盛して ましてよ」

「嘘がお上手でございますわね。ではお稽 古がありますので失礼いたします」

Bは一礼してどこかへ行った。

「嫌らしい女ですわ」

「Aさん。帰ってくのが遅いですわよ」

Aの母親が帰ってきたAに話しかけた。

「すいません。Bさんとお話していたので す」

「Bさんは最悪な人ですのよ?話していた ら汚れてしまいますわ。いいですわね?」

「……はい」

ひどい人ではないのに。

お母様はひどいですわ。

「A」

「お父様が呼んでますわよ。早くいきなさ い」

「あ。参ります」

「こっちに来なさい」

お父様につられて私はお父様の書斎に入 る。

「なんですの?」

「うちの会社はもうダメだ」

破綻…。

そんな言葉が出てきた。

Bさんのいう通りでしたね。

「私にどうしろとおっしゃるのですか」

「Bさん宅からお金を借りてほしい」

「私にそんな役をくださるのですね」

「……」

「お父様は私を汚したいようですね」

「お前は私の子供だ。親の言うことを聞 け」

「……はい」

逆らってはいけない。

でも。

私自身が嫌なの。

私はそんな惨めな役がほしくない。

私はきれいでいたいのに。

お父様が私を汚していく。

「お父様…」

消えればいいのに。

何を考えてるの?

私を育ててくれた。

私に贅沢な暮らしをくれた。

お父様よ?

――素直になろうよ。

そんな声が聞こえた。

まるで悪魔。

「素直になっていいのですか?私はお父様 に歯向かってもいいのですか?」

――いいよ。

「私は自由になりたい」

私は私らしい私をだしたい。

この私を捨てたい。

「さよなら」

私は私を捨てる。

もう私じゃない。

「いやだ…なんで」

うん。

私は私を殺した。

あんな惨めで情けない私はもういないんだ ね。