〈アズサside〉

ユウくんが帰った。

あぁ。

私のことウザかったのかなぁ?

わかってる。

こんなことしたってユウくんは振り向いて くれない。

だからってあの事を言いたくない。

どうして忘れちゃったの?

「おい。席つけ。授業始めるぞぉ」

早く席につかないと。

でも私から行動起こさないといけないと思 う。

「先生、頭痛いので保健室行きます」

昔にもどれ。

何も考えるな。

私はがむしゃらに走った。

走る前、ファンの声が聞こえた。

私を止めてた。

「はぁ…はぁ…」

やばい。

走れない。

体育サボってたからかな?

「ユウくん…」

見つけた。

どこに向かってるの?

家よね?

好きな人なんて本当はいないんでしょ?

勢いで言ったんでしょ?

ここはどこ?

「…ユウ」

昔は名前で呼んでた。

ユウがユウくんって呼べって言うから。

「どこに行くの?」

誰にも伝わらない声で言った。

この声は誰にも伝わらない。

ねぇ。

私の知らない人のところ?

「え?」

誰だろ。

「こんにちは」

「おそい」

「…ごめん」

「ねぇ。読んだ?」

「まだ」

「ふぅん」

誰かの声が聞こえる。

その人が好きな人なの?

私は影から見ていたけどライバルの顔が見 たくて覗いてしまった。

「かわいい…」

かわいい。

見た瞬間そう思った。

私なんかじゃあ勝てない。

涙が溢れる。

やだ。

こんな顔、ユウくんに見せられない。

会いに行きたい。

けど。

こんな私じゃあ会えないよ。

マスカラは落ちて、黒涙だし。

その前にあの人の側に行きたくない。

話したくない。

なんて醜いの?

私はそのまま帰った。



でも諦められない。

ユウくん。

あの日の思い出はユウくんにも残ってるよ ね?

私、あの日。

ユウくんに誓ったもの。

あなたの前で。

あなたに。