「こんなの読めるかっ!!」

100ページ読んだのに全然終わりが見え ない。

「何読んでんのぉ?」

うわ。

ウザいのが来た。

椅子に座っている僕にこいつはしゃがんで 僕の顔を除き込んでくる。

「なんだよ…」

「アズサも読んでみたい。読み終わったら 貸して?」

「いやだ」

「題名何かな?」

「ちょ。やめろっ!!」

アズサが本を引っ張る。

「ちょっと見させてよぉ。ユウくんがどん な本読んでるか知りたいんだもん!!」

アズサは立ち上がって力説をした。

はぁ。

周りが見てるじゃん。

それにこいつはクラスのアイドルみたいだ から。

怒鳴れないし。

はぁ。

もう最悪。

「ん」

僕はアズサに見せた。

“友情の裏切り”という本の題名を。

「らしくないね」

「え?」

「ユウくんなら面白いのとか……ポジティブ な本ぼかり読むのに。急に変わったね」

「……」

めんどくさい。

「なんかあった?やっぱり……浮気してたん だ!!!!」

「「「え!?」」」

はぁ。

クラス全員が僕とアズサが付き合ってるっ て勘違いしたな。

はぁ。

もうため息しかでない。

「アズサ様、あいつはやめといた方が……」

アズサのファンがアズサに忠告をする。

もっと強く言えよ。

そんなんじゃあアズサは引き下がらない よ。

「何よぉ。私の勝手でしょ?」

「ですがぁ…」

やっぱり。

「僕とアズサは付き合ってないから」

アズサが睨んだのがわかった。

本当のことじゃん。

「本当ですか?」

アズサのファンが僕に真意を問う。

「もちろん。アズサはただの幼なじみ」

無表情で言った。

なんかショウみたいだったかもしれない。

「ユウくん!!」

「本当、やめて…前も言っただろ?」

「でも…」

「違う男にしろよ。僕なんかよりいい男な んてたくさんいるだろ?」

「私はユウくんがいいの!!」

「僕には好きな人がいるんだ」

「ユウくんに好きな人?」

アズサの顔が一瞬で変わった。

アズサの表情は僕のモノなんだって思っ た。

「……」

こんな状態なのにアズサファンは助けてや らないのか。

こんな状態だからこそか。

「だれなの?」

唸るように呟いた。

「ユウくんの好きな人って私よりもいい女 なの?」

「あぁ」

「私はいつもきれいになろうって心がけて いた。…全部ユウくんのためなのよ」

はぁ。

僕のためじゃないよ。

自分のためじゃん。

それを僕のためみたいにいってほしくな い。

てかめんどくさい。

「……」

帰ろ。

僕は荷物をまとめた。

ガラッ。

次の授業の先生が来た。

やっぱり動揺している。

「先生、頭痛いんで早退します。ちゃんと 担任は言ってから帰ります」

先生は呆然としていた。

まぁ、いっか。

言ったし。

そう思い、教室を出た。