「そのあと、私は何度も人を殺して楽し み、幸せだった」

ショウが主人公のことを“私”って言うか ら。

ショウ自身の話みたい。

「こんな感じです」

「え?終わり?最後にはどうなったんです か?」

「知りませんよ」

ぷいと横を向いた。

「結局、どこが僕に似ているんですか?」

僕の言葉を聞いてショウは驚いていた。

それにつられて僕も驚いた。

「あなたは…」

僕は…。

ショウにどんな風に思われているんだろう か。

「犯罪者みたいですから」

「へ?」

「平気で嘘をつきます」

「それだけ?それだけなら他の本の主人公 の方がいいよ」

「……」

「最近のだったら“ヒーローズ”っていう本 とかいいよ」

「?」

知らない。

そんな風にショウが言った気がした。

最近の本には疎いのかな?

「私は外を知りません」

「え?」

「あなたの想像通り、私はその本を知りま せん。私の世界はここにある本だけ…」

外を知らない。

何も。

「そう言えば…」

「なんですか?」

「ここにある本ってなんかグロい題名ばか りですね」

惨殺殺人事件。

人形の殺人。

愛と友情そして憎しみ。

愛人の末路。

やっぱりグロい。

「ここは殺人図書館ですから」

平然とショウは言った。

外で言ったらここで殺人があるじゃない かって勘違いしそう。

え?

まさか…。

「殺人関係の本だけだから私が名付けまし た」

「へぇ…って普通の人は言わないよ!?」

「……」

じぃ。

なんで真顔で僕をみるの?

「あなたもここの本を読んでみては?」

「遠慮します」

「拒否け…」

「拒否権はありません。でしょ?」

「そ、そうです」

ムカつく。

またショウの気持ちがわかる。

いや。

顔に書いてるんだよな。

そして何も言わずショウはどこかへ消え た。

今、何時だろ。

そろそろ帰んないと。

母さん心配してるかも。

バンッ。

また重たい本を持ってきた。

今度こそ読むのか。

「……」

「無表情やめろ。てかこれの説明初めて」

「読め」

「うわっ。急に命令形になった。ショウ、 こわーい」

ちょっとバカになってみた。

「さよなら」

また消えた。

必要なくなったら消えるとか。

なんかずるいよ。

「帰ろ…」

そしてまた紫のドアを開けて殺人図書館を 出る。

明日も来るんだろうな。

そう思いながら重たい本を持ち直した。