膝に手を置き、整わない呼吸を必死で落ち着かせる総二郎は、一度俺に向き直ったが、目はぼんやりとしていて、視点の先はわからなかった。

「俺の知らない場所に行ったのかもな」

「お前で見つけられなきゃ、そうなんだろうな」

知らない場所…。

もう一度その言葉を吐いたとき、どことなく総二郎が、近くに感じた。
(あ、こいつ、寂しいんだ―…)

実際そうだったのかわからないけれど、そう感じた俺は、今までで一番総二郎を近くに感じれた。
こいつにも、そういう感情あるんだな。
普段わかりにくいだけで、ちゃんと普通の“男”だ。

「俺、行くわ」

「おぉ。早く見つかるといいな」

「うん、じゃあな」

そう言って、総二郎はまた走り出した。


しばらくその場で、総二郎の姿を見送っていた。

(あ、伝言伝えるの忘れてた…)

あの調子じゃ、りんご飴なんて忘れてるんだろうな。

(あれだけりんご飴に必死だったくせに…)


落とした衝撃で、欠けてしまったりんご飴を持ち直し、再び歩きだした。



吉野、お前今どこにいるんだよ―――……。

あの総二郎が、汗だくなって捜してるんだ。


さっきの総二郎の顔を思い出し、そんな友のために、俺は見つかることを願った。