寝転んでいた身体を半身起こし、置いていたペットボトルに手を伸ばした。

(よく寝るな~、ほんと)

ぬるくなったお茶をゴクッと飲み、寝てる総二郎を見た。

額にはうっすら汗が滲み、人差し指に引っ掛けるように胸に置かれた眼鏡。


…………あの頃はまだ、眼鏡かけてなかったな。


唯一の喋り相手が寝ているにもかかわらず、退屈してない私。


退屈だなんて思ったこともない。

すごく自然で、これだから退屈しないんだ、総二郎という男は。


また私も寝転がろうとしたとき、チャイムがなった。


「ちょっと、チャイム鳴ったよ」

揺すって起こしてみたけど。

「…………うん、眠いな~」


……………起きる気はないようで。


「私、もう行くからね!」

「…………うん、枕ね」


何言ってんだ、もう。


会話にならない会話をしているのに、腹が立つどころか、私の身体も石のように重くなり、もう一度寝転がった。


「…………重力のせいにしとこう」

隣から聞こえた声に、首をそっちに向ければ、横を向いた総二郎と目が合った。


総二郎の右手は、眼鏡から私の毛先に移り、指でくるくると遊んでいた。