蕎麦屋から駅へと向かう道を、またもマミさんの傘に入れてもらいながら並んで歩いた。
マミさんが走って戻ってきくれたおかげで、ミレイちゃんとサラさんを含む4人の女の子達は慌てて店を出て行った。
まだ終電に余裕があるらしいミオさんは私たちの前を歩き、遠くから来ていてもうとっくのとうに終電はなく、カラオケでオールなんだという女の子たち5人は、私とマミさんの後ろを歩いていた。
終電を逃してしまった私は、マミさんがお家に泊めてくれるというので、なんだか申し訳ない気がしたが好意に甘える事にした。
自宅からたくさん着信があったのに、マナーモードにしたままバッグに入れていたせいで電話に気付かなかった私のスマホから、マミさんが私の自宅に電話をかけてくれて。
「具合が悪くなってしまい、電話に気付いていなかったので連絡が遅くなった。」と、「具合が悪いままで電車に乗るのは難しいので一晩泊めます。」という事を私の親に説明してくれた。
駅の前まで来ると、カラオケに行くらしい女の子達と別れて、改札口へと向かった。
マミさんとミオさんが歩いてゆく方向へと私も足を進めて、電車のホームへと向かった。
「私、明日は朝からバイトでいないけど、サツキちゃんは好きな時間に帰って良いからね。」
電車が来るのを待つ間にマミさんは言った。
「いえ。私もマミさんが行く時に帰ります。おうちのヒトにも迷惑だと思うし。」
「私、朝早いよ?ウチ、弟と二人暮らしだからさ。気にしないで居ていいからね。」
私からの申し出に、マミさんは言う。
「今、サトルくんも家に居るの?」
ミオさんがマミさんへ尋ねた。
「サトルくん?」
ミオさんが口にした誰かの名前を復唱しながらマミさんを見ると、マミさんは「あぁ…」と小さく呟いて。
「私の一つ下の弟。仕事でウチに居ない時は全然いないんだけどね。」
マミさんがそう答えると同時に、電車が来る旨のアナウンスが駅のホームに響き渡った。
すぐにホームへと入ってきた電車に三人同じドアから乗り込む。
今日は金曜日なので、週末の0時を過ぎたばかりの電車の中は少し混雑していた。
ぎゅうぎゅうの満員電車ではないが、人口密度の高い車内に三人固まって向かい合って乗る。
「サツキちゃんは明後日も?」
ミオさんに尋ねられた。
今日ライブを見に行ったブルームーンというライブは今日からいろんな土地を巡ってライブをするツアーが始まる。
明後日もライブのスケジュールはあった気がする。
明後日は日曜日なので学校は休みだが、遠い場所だったのでそれよりはだいぶ近い今日のライブのチケットを買ったのだ。
「いえ…私は…。」
「そっか。今回のツアーは今日だけ?」
「うん。他のチケット買ってないです。」
「へぇ…じゃあ、水戸のチケット余ってるんだけど…」
「ミオ。」
ミオさんの話の途中で、マミさんがミオさんの名前を呼んだ。
口を閉じてミオさんはマミさんを見る。
「いきなり、茨城県でのライブの話なんてされても困っちゃうよね?」
マミさんは私を見ながら、苦笑いをしているようにも見える口元で言った。
それからミオさんもマミさんも黙ってしまったので、私も口を閉じていた。
「次で降りるよ。」
マミさんが言う。
「はい。」
マミさんの言葉に頷いた。
まだ少し電車に乗るらしいミオさんにお別れの挨拶を告げて、マミさんと一緒に電車を降りる。
マミさんのお家は駅からも歩いて少しの距離の、ちょっと小綺麗な佇まいのマンションだった。
「狭いんだけど、ごめんね。」
そう言ってから、マミさんは玄関のドアを開けた。
「お邪魔します。」と言って玄関に上げてもらい、ローファーを脱いで揃えて置いた。
マミさんのおうちは玄関を上がるとすぐキッチンが見える広いスペース。
その広いスペースに、ベッドやシルバーの色したメタルラックの棚といった家具、大きなオーディオセット。それから、ギターが3本立てて飾ってある。
カーペットの上に鎮座するローテーブルの上には雑誌や漫画が乱雑に置かれていて、なんだか違和感。
マミさんのお家のような気がしない。
呆気に取られて室内を見る私には構わず、マミさんは玄関から見て奥にあるオーディオセットの脇のドアを開けた。
「ちょっと散らかってるけど、気にしないでね。」
私にそう告げて、ドアの向こうへと入っていくマミさん。
彼女を追いかけてドアの向こうへと私も入る。
そこは、さっきとは違い、猫脚の白い家具でコーディネートされて淡いラベンダーカラーのカーテンが揺れる可愛いお部屋。
この光景はマミさんのおうちとしてしっくりくる。
「バッグとか適当に置いていいからね。
ソファーにでも座ってて。」
ベージュのクッションが並ぶ二人でいっぱいいっぱいになりそうな小さめなソファーの脇の床にバッグを下ろし、マミさんに促されるままソファーに座った。
目の前には白い猫脚のテレビ台に置かれたテレビ。
マミさんはクローゼットを開いて、中からなにやら大きな袋のようなものを引きずり出す。
その中から出てきたのは、お布団。
「干してからしまったけど、ちょっとぺっちゃんこかも。」
と言いながら、マミさんは布団を床に置いた。
「ねーちゃん?帰ったの?」
男の人の声がして、ドアが開いた。
そこには明るい茶髪で襟足と前髪の長い、長身な男の人が居た。
上半身裸で、下半身は黒いスウェット姿。
肩にタオルをかけていて、髪の毛は濡れている。いかにもお風呂上りのよう。
「サトル、お客さん来てるから服着なさい。」
マミさんが言うと、サトルと呼ばれた男の人は、私を見た。
「あ。悪い。またミオかと思ったら違った。」
苦笑を零した風な表情をしてお風呂上りの男の人が言う。その顔は、男の人というよりはすごく中世的にも感じられ、マミさんに似ている気もした。
その男の人はすぐに部屋の扉を閉めて、見えなくなる。
「あれ、ウチの弟。ごめんね、いきなりあんなんで。」
マミさんに言われて彼女の方へと視線を向ける。
お布団をしき終わったマミさんは、クローゼットから服を取りこちらへ差し出す。
「着替え、これ使って良いからね。お風呂してきちゃいな。」
そう言ったマミさんから着替えを受け取った。
「すみません。」
お布団もしいてもらって、着替えの用意までしてもらって、至れり尽くせりだ。
迷惑をかけている詫びの言葉を口にすると、「お風呂はこっちね。」と言いながら、マミさんは部屋のドアを開けた。
私もそれについてゆく。
マミさんの部屋を出たキッチンの見えるスペースがキッチン兼弟さんのお部屋なのだろうか?
そこではTシャツも着込んだ弟さんが冷蔵庫を物色しているようだった。
キッチンのシンクの脇のドアをマミさんが開く。
「お風呂はここね。」
そう言ったマミさんに促されて、私は脱衣所兼洗面所らしいそこへと足を踏み入れた。
マミさんが走って戻ってきくれたおかげで、ミレイちゃんとサラさんを含む4人の女の子達は慌てて店を出て行った。
まだ終電に余裕があるらしいミオさんは私たちの前を歩き、遠くから来ていてもうとっくのとうに終電はなく、カラオケでオールなんだという女の子たち5人は、私とマミさんの後ろを歩いていた。
終電を逃してしまった私は、マミさんがお家に泊めてくれるというので、なんだか申し訳ない気がしたが好意に甘える事にした。
自宅からたくさん着信があったのに、マナーモードにしたままバッグに入れていたせいで電話に気付かなかった私のスマホから、マミさんが私の自宅に電話をかけてくれて。
「具合が悪くなってしまい、電話に気付いていなかったので連絡が遅くなった。」と、「具合が悪いままで電車に乗るのは難しいので一晩泊めます。」という事を私の親に説明してくれた。
駅の前まで来ると、カラオケに行くらしい女の子達と別れて、改札口へと向かった。
マミさんとミオさんが歩いてゆく方向へと私も足を進めて、電車のホームへと向かった。
「私、明日は朝からバイトでいないけど、サツキちゃんは好きな時間に帰って良いからね。」
電車が来るのを待つ間にマミさんは言った。
「いえ。私もマミさんが行く時に帰ります。おうちのヒトにも迷惑だと思うし。」
「私、朝早いよ?ウチ、弟と二人暮らしだからさ。気にしないで居ていいからね。」
私からの申し出に、マミさんは言う。
「今、サトルくんも家に居るの?」
ミオさんがマミさんへ尋ねた。
「サトルくん?」
ミオさんが口にした誰かの名前を復唱しながらマミさんを見ると、マミさんは「あぁ…」と小さく呟いて。
「私の一つ下の弟。仕事でウチに居ない時は全然いないんだけどね。」
マミさんがそう答えると同時に、電車が来る旨のアナウンスが駅のホームに響き渡った。
すぐにホームへと入ってきた電車に三人同じドアから乗り込む。
今日は金曜日なので、週末の0時を過ぎたばかりの電車の中は少し混雑していた。
ぎゅうぎゅうの満員電車ではないが、人口密度の高い車内に三人固まって向かい合って乗る。
「サツキちゃんは明後日も?」
ミオさんに尋ねられた。
今日ライブを見に行ったブルームーンというライブは今日からいろんな土地を巡ってライブをするツアーが始まる。
明後日もライブのスケジュールはあった気がする。
明後日は日曜日なので学校は休みだが、遠い場所だったのでそれよりはだいぶ近い今日のライブのチケットを買ったのだ。
「いえ…私は…。」
「そっか。今回のツアーは今日だけ?」
「うん。他のチケット買ってないです。」
「へぇ…じゃあ、水戸のチケット余ってるんだけど…」
「ミオ。」
ミオさんの話の途中で、マミさんがミオさんの名前を呼んだ。
口を閉じてミオさんはマミさんを見る。
「いきなり、茨城県でのライブの話なんてされても困っちゃうよね?」
マミさんは私を見ながら、苦笑いをしているようにも見える口元で言った。
それからミオさんもマミさんも黙ってしまったので、私も口を閉じていた。
「次で降りるよ。」
マミさんが言う。
「はい。」
マミさんの言葉に頷いた。
まだ少し電車に乗るらしいミオさんにお別れの挨拶を告げて、マミさんと一緒に電車を降りる。
マミさんのお家は駅からも歩いて少しの距離の、ちょっと小綺麗な佇まいのマンションだった。
「狭いんだけど、ごめんね。」
そう言ってから、マミさんは玄関のドアを開けた。
「お邪魔します。」と言って玄関に上げてもらい、ローファーを脱いで揃えて置いた。
マミさんのおうちは玄関を上がるとすぐキッチンが見える広いスペース。
その広いスペースに、ベッドやシルバーの色したメタルラックの棚といった家具、大きなオーディオセット。それから、ギターが3本立てて飾ってある。
カーペットの上に鎮座するローテーブルの上には雑誌や漫画が乱雑に置かれていて、なんだか違和感。
マミさんのお家のような気がしない。
呆気に取られて室内を見る私には構わず、マミさんは玄関から見て奥にあるオーディオセットの脇のドアを開けた。
「ちょっと散らかってるけど、気にしないでね。」
私にそう告げて、ドアの向こうへと入っていくマミさん。
彼女を追いかけてドアの向こうへと私も入る。
そこは、さっきとは違い、猫脚の白い家具でコーディネートされて淡いラベンダーカラーのカーテンが揺れる可愛いお部屋。
この光景はマミさんのおうちとしてしっくりくる。
「バッグとか適当に置いていいからね。
ソファーにでも座ってて。」
ベージュのクッションが並ぶ二人でいっぱいいっぱいになりそうな小さめなソファーの脇の床にバッグを下ろし、マミさんに促されるままソファーに座った。
目の前には白い猫脚のテレビ台に置かれたテレビ。
マミさんはクローゼットを開いて、中からなにやら大きな袋のようなものを引きずり出す。
その中から出てきたのは、お布団。
「干してからしまったけど、ちょっとぺっちゃんこかも。」
と言いながら、マミさんは布団を床に置いた。
「ねーちゃん?帰ったの?」
男の人の声がして、ドアが開いた。
そこには明るい茶髪で襟足と前髪の長い、長身な男の人が居た。
上半身裸で、下半身は黒いスウェット姿。
肩にタオルをかけていて、髪の毛は濡れている。いかにもお風呂上りのよう。
「サトル、お客さん来てるから服着なさい。」
マミさんが言うと、サトルと呼ばれた男の人は、私を見た。
「あ。悪い。またミオかと思ったら違った。」
苦笑を零した風な表情をしてお風呂上りの男の人が言う。その顔は、男の人というよりはすごく中世的にも感じられ、マミさんに似ている気もした。
その男の人はすぐに部屋の扉を閉めて、見えなくなる。
「あれ、ウチの弟。ごめんね、いきなりあんなんで。」
マミさんに言われて彼女の方へと視線を向ける。
お布団をしき終わったマミさんは、クローゼットから服を取りこちらへ差し出す。
「着替え、これ使って良いからね。お風呂してきちゃいな。」
そう言ったマミさんから着替えを受け取った。
「すみません。」
お布団もしいてもらって、着替えの用意までしてもらって、至れり尽くせりだ。
迷惑をかけている詫びの言葉を口にすると、「お風呂はこっちね。」と言いながら、マミさんは部屋のドアを開けた。
私もそれについてゆく。
マミさんの部屋を出たキッチンの見えるスペースがキッチン兼弟さんのお部屋なのだろうか?
そこではTシャツも着込んだ弟さんが冷蔵庫を物色しているようだった。
キッチンのシンクの脇のドアをマミさんが開く。
「お風呂はここね。」
そう言ったマミさんに促されて、私は脱衣所兼洗面所らしいそこへと足を踏み入れた。
