「度々、すみません」 その言葉に笑顔で答えたが、彼の左薬指に光るリングは、気分を落ち込ませるのには充分な理由だった。 『とことん、嫌な日かも……』 再び、下を向く。 『最近の私を強調してるかのようだわ……幸、薄し…か』 そんな憂鬱な気分をよそに、降りる駅に着いた。 いたたまれないような重たい足取りで、改札を抜け会社へと急いだ。