南は軽くあくびをしながら目線だけをリンダに向けました。

「あのさ――地球って――どんな、とこ?」

リンダの質問を聞いた南は、ちょっとめんどくさそうな表情で弄って居た携帯をパタンと畳み、これも又、めんどくさそうな口調で、ぼそぼそと話し始めました。


「――都会だ」


それを聞いたリンダが南の顔を覗きこみます。それは自分も知って居る。

「都会?どんなふうに、都会なの?」

南は胡坐をかいて座った膝のあたりに視線を落とし、ちょっと考えてから、言葉を選んで、こう答えました。

「無い物が無い。無い物を見つける事が難しい処だ」

リンダは南の顔から視線を外し空を飛び交う小鳥を目で追いかけつつ、ふうんと鼻を鳴らして答えました。そして再び南の顔を覗き込むと更に質問を続けます。

「で、南は地球で何やってたの?」

南は質問攻めに合うのが苦手な様でリンダの質問に少し溜息を交え、視線を交える事無く出来るだけ簡潔に答えて行きます。そして南は一言だけ、こう答えました。


「勉強」


リンダは彼の顔を見て目をぱちくり…