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干し草をいっぱいに積み込んだ一輪車を何時もの様に押しているつもりだったのですが、リンダの足元がおぼつきません。

時間にして7時間、殆ど休み無くした勉強は、予想以上に彼女の体力を奪っていました。

こんなに集中して勉強した記憶は生まれてこのかた有りません。この時点でリンダは、はっきりと確信しました。あたしは地球には住めないと。

ただ、南に劣る部分が有る事が悔しい事は確かです。文武両道、それは難しい事とリンダは身にしみて感じました。

その、勉強を見てくれた南はと言えば相変わらず牛舎に入る事無く、むかつく事に携帯をいじりながら時間を潰しておりました。もう、怒る気力も有りません。


「ちょっと、あんた、少しは手伝ったらどうなのよ」


リンダの声に南はちらっと視線を送っただけで、相変わらず髪の毛と携帯にご執心。力仕事を率先してやろうと言う意思は見られません。いくら成績が良くても、人に対する思いやりが無いのは人間としてどうなのかとリンダは考えた。


「なぁ…」


牛舎の入口で南がぼそっと呟いた。


「何よ?手伝う気になった?」


とげとげの口調でリンダは南にそう言ったが、彼はその言葉を鼻で笑って一蹴すると折り畳み式の携帯をパタンと閉じて悪びれる事無くこう言った。