旧図書館の扉を開ける。 「こ、こんにちは」 「こんにちは」 よかった、いた。 「読ませてもらったよ。ブロンテは短編しか読んだことなくて、これ読もうと思ってたんだ。ちょうどよかったよ、ありがとう」 一安心する。私が渡した本は勿論、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」…もちろん、私の私物。 「読書後の独特な余韻に浸れた。それに…」 そこで、蒼太君は長い間間を取った。それが不安を掻き立てる。 「…こんな、偶然もあるのかな、と」 私はこの一言で、自分の物の考え方が変わるなんて思いもしなかった。