「世界初の推理小説と言われているのは、誰の何という作品?」
「…エドガー・アラン・ポーの、モルグ街の殺人ですか?」
「正解、では、1970年11月25日に…」
「三島由紀夫ですか?」
「お、おう、それだ。では『武蔵野』『竹の木戸』などで…」
「国木田…誰でしたっけ…トクホ?」
「惜しいな、独歩だ。トクホは特定保健なんちゃらかんたらの略だぞ」
最後をど忘れし、下唇の噛みしめる私に冷静にツッコんできた。それに、少しイラッとする。
「しかし…君になら任せてもいいな。よろしく頼むぞ!」
「えっ、で、でも…」
「武蔵野の初版本、あそこにはあるぞ。大正7年、新潮社発行の保存状態は良好だ」
私は、息を止めた。武蔵野の初版?それは私のお小遣い4か月分…なら、いっか。
それだけでは、満足しなかったが、次の一言で私は了承してしまった。


