「……名前は？」
「えっ…」
「名前、君の知らないから」
さっきからどんどんぶっきらぼうになっているような気がする。敬語じゃなくなったし…
「な、中渡瀬涼風です」
「…そう」
…向こうも名前、言ってくれないかな…
読めない。だから蒼太君と呼んだ。でも名前で呼ぶのは、やっぱ失礼だと思うし…でも名字は読めないし…ああ、もう。
「…何で名前で呼んだの」
「…いきなり確信に触れられた…」
不味い。名前が読めないなんて、失礼だ。ましてや、どこかで見たことある苗字なら。ちなみにヤマサキとヤマザキは仕方ないと思う。
すると彼は、薄笑いを浮かべた。
…いかにも詐欺師。でも…かっこいい。…何考えてんだろ、私。顔が火照る。思わず顔をそむけた。
