すると彼が不機嫌そうに、こちらに顔を向けた。
「何、人の顔じろじ………ろ…」
何か言われると思ったけれど、急に何も言わなくなった。
…途中で明らかに辞めたのがわかった。理由はわからないけど…よかった。
しばらくして、彼が席を立った。本を読み終わったらしい。
私は思い切って、言ってみた。
「そ、蒼太君って言うんだよね?」
彼の手が、司馬遼太郎のところで止まる。
「そうですけど…何か?」
「…明日もここ使いますか?使うなら開けておきますが…」
「…考えとく」
さっきの失礼な態度ではなかった。不思議に思ったけど…嬉しい気持ちの方が強かった。


