「…なにじろじろ見てるんです?気持ち悪い、寒気がする、虫唾が走る、死ね」
「な……」
私の中で、イメージが崩れた。そして心も崩れた。初対面で、悪口の最高峰を並べられた。
「…し、死ねとか、言わない…でよ」
普段、人と話さない私は、語尾が弱まる。私の足が震えてくる、少し後ろにたじろいだ。
「…読書の邪魔、しないでくれます?」
そう言われると、何も言えない。
静かに本を取り出し、彼の前に座った。
名札を盗み見る。…なんて読むんだったっけ。
「五百蔵蒼太」
ごかもち?ごひゃくくら?違う…なんだったかな?
本を読まずそればかり考えていた。


