「ということは…多分」
なんとなく予想がついている自分。それに納得しているのは異常だとおもうが、受け入れるしかないのだから仕方ない。
「弥勒地さん…先週お亡くなりになられましたよ」
病室で聞いた。隣の人が証言してくれたのだ。
あの笑い上古なおじいさんは、やはり幽霊だった。看護士さんが睨みつけていたのは、私がひとりで話していたからだろう。
「どんな方でしたか?」
「優しくて、笑顔が眩しい人だったよ…退院の日に、階段から落ちるとはねえ…」
まるである歌手のような死に方に、私は静かに手を合わせた。
弥勒地さんは最後に「縦の物は、横にしなさい、横にしないのは駄目だよ」と言っていた。
家に帰って調べてみると、今の私にぴったりだと思った。確かに私は「告別式」という通過儀式を軽く行っていたかもしれない。毎日が疲れてテキトーになっていた。
家での用件を済ませ、母さんの見舞いへと再び病院に戻った。


