relations


「すいません、社長の代理でやってまいりました。これを」

「ああ、ありがとうございます。社長のお嬢さんですね」

「はい。…すいません、及川さんはいつ亡くなられたのですか?」

「…一昨日、主張先から小野寺さんの葬式会場に向かう途中…心筋梗塞でした」


一昨日。なんかもう、認めざるを得ないような気がする。
私は昨日、幽霊?使者…死者に二度もあってるの…
私の感覚は麻痺しているのかな…先ほどと違い、怖くない。





思えば、二人とも優しかった。普段人と滅多に話さない私なのに、普通に話せたし…それに悪いこともしてないし…


及川さん、優しかった…ダメ人間に近い感じだったけど…


「及川さんは、よく仕事してましたか?」

「及川君はね、小野寺課長の秘書的な感じで、いいコンビだったよ。仕事もちゃんとこなして、売り上げも良かった。まあ、考え方や身なりが、駄目な人を思わせる人だったかな…」


あの人、あれでちゃんと仕事ができていたらしい。ありがとうございます。


「…まさか、同じタイミングで亡くなるとはね…」

「そうですね…ご冥福をお祈りします」

「ありがとうございます」


あの日、及川さんは、小野寺さんのお葬式に幽霊として出席していたのだ。あの日、私たちを不審そうに見ていたのは、及川さんが笑っていたからではなくて、私が誰も居ないのに誰かと会話していたからだろう。


怖さはなくなり、なぜかあったかい気持ちになった。幸い、骨葬では無かった為、午前中は及川さん、午後は礼堂さんと行くことができる。


私は、長いお経も退屈しなかった。遺影を見ると、ダメそうな、よれよれの服を着て、微笑んでる及川さんの姿が、少しおかしかった。