「ん、ん……」
唸るような微かな声
その声は確かに彼の喉から発っせられたものだった
見れば先程までまだ痛々しかった傷痕はすっかり消え、かわりに彼の頬がほのかなピンク色に染まっていた。
その声と同時に役目を終えたかのように光りは消え去っていた。
「イア……イア!よかったぁ…よかったよぉ………」
はっとした瞬間には体が勝手に動き、イアを抱きしめていた。
涙が溢れる
一生分の涙がなくなってしまうかと思うほど……
「シルヴィア、治してくれたのか?」
黙って一回首を縦に動かす
「ありがとう……」
そういうイアの瞳からも涙が零れていた。
すっと静かに頬を伝う涙は、本当に美しかった。
その後ろで、ニアとアイリウスはじっと二人を見ていたが、やがてアイリウスが口を開いた。
「ニア、おかえり。待ってた。君が私の隣にまた愛を持って手を握ってくれるのを………」
「アイリウス……私はなんて大切な記憶を失っていたのかしら。シルヴィアが戻ってくると信じられなかったの。ありがとう…アイリウス。貴方がいたから私はここにいられる。私もまた隣に立つことができて嬉しい」
見つめ合う二人がイアとシルヴィアの見ていないところで涙の口づけを交わしたのは誰も知ることはない………
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