悪魔の彼





ねぇ、私の気持ち、伝わるかな?






「母様……私、どうしたらいい?」




私に近づくニア。


すぐそばまできて、私に寄り添う。





「まずは、彼のことを思い浮かべて。楽しかったことでも嬉しかったことでもいいわ」




目を閉じた



ゆっくりと……ゆっくりと








最初に思い出すのは、"結衣"としてはじめて会ったあの時の記憶




それから、"シルヴィア"としての記憶



どちらのイアも少しお調子者で、でも優しくて温かい大きな存在だった。


まだ幼く小さかった私が、イアと会うたびに鼓動が速くなった理由が、今なら何故だかわかる。






「シルヴィア、できた?」






ニアの声に頷く。





「じゃあイアに近づいて」





その言葉に従い、イアの方に一歩ずつ近づく。