悪魔の彼






口が小さく開かれて、かすれた声が聞こえてきた。





「シ……ルヴィ、ア」








声をだすことさえも苦しく、難しいように見える。



そして、もうひとつ




イアはピアスを付けていないのに気付いた。







「イア、ピアスは?」




「ない、よ。とられ…た」





だったら……



こんな錆びはじめた手錠、引きちぎることが出来たはず


警官を倒して、逃げることもできたはず




すくなくとも

電気系統のこのイアを痛め付けた魔法は、よけられたはずだった。




しかし、彼はよけなかったし、逃げもしなかったのだ
誰も傷つけてはいけない

こんな力をもつなら、ここにいたほうが



きっとそう思ったのだろう。



違いはあるが、人並み外れた力を持つもの同士そんな気がした。






イアは私に気付いてからすこしたち、自分の傷が凄い早さで癒えていっているのを見て、気まずそうに隠した。






王は相変わらずぽろぽろと涙をこぼしていた。