悪魔の彼





倒れた衛兵を門の脇に座らせ、シルヴィアはアルに向き直る。



「さあ、行きませんか?」




「しかし、どうやって門を開けるつもりですか?」






二人の目の前に立ちはだかる門。


しかし、今のシルヴィアの前にそのことはさほど問題ではなかった。




そっと門に手を添える。


普通なら大の男が十人掛かりであけるか、何か器具を使わなければ開かないような門だったが………





シルヴィアが徐々に力をいれていくにつれ、門もあいていく。



彼女はいたって冷静で汗も流していなかった。






にも関わらず、門が完全に開くのに一分もかからなかった。





「進まないといけないわ。この先に……アル、来てくれる?」



強くにぎりしめたレンガの壁を、パラパラと落としながら、シルヴィアは今にも泣きそうな顔で言った。