悪魔の彼





今度は私の目から涙が零れそうになった。



しかし堪えた。



彼女の思いを無駄にしないために、堪えなければならないと思った。






「でも何も言わなくても伝わったのよ。貴女がもう泣いていないことが……今1番すべきことは泣くことじゃなくて、イア君を助けることだと貴女が気づいたことが。」







リナはそこで一息つくと皆の方へ向き直った。





「彼女もまた、役目は終わったと言っていました。」



静かに語る。





最後に残ったのはティープだった。



リナの表情はどこか怒ったような、その反面落ち込んだような複雑なものだった。





「ティープ−−彼は本当は魔界王の元へ行くつもりだった。でも、悪魔の王でも会えないのなら自分がいく意味はないと……」




リナがティープを頼りにしていたのは薄々気づいていた。





しかし、私が思う以上にティープの存在が大きかったようだ。






「彼はまたこうも言っていました。自ら助けられない事は悔しいが、ここまで来れたことで充分だと………自分の役目は終わったと。」