ナツは、そんな私を見て、嬉しそうに、少し照れながら、笑う。
蝉の鳴き声が響く。
夏が香る。
…太陽が、肌を焼く。
「…好きだよ。未海」
君の声が、何よりも強く聴こえる。
周りから、小さく歓声が聞こえた。
声も何もでない私を見て、やっぱりナツは眩しく笑う。
「夏が来るたび、可愛くなってくからさぁ。俺のことなんかすぐに忘れると思ってたのに」
…なに言ってんの。
そんなわけ、ないじゃん。
「…誰のために、頑張ってると思ってんの………?」
思わず声が震えると、ナツは笑いながら私へ一歩近づいて来る。
…ねぇ、ナツ。
ひとつ、わがままを言わせて。
「…来年の夏も、会いたい」
君は笑いながら、携帯を取り出して、私へ見せる。
「…夏、だけ?」
再び涙をこぼし出した私に、君は海がよく似合う笑顔で、笑うんだ。
「俺は未海がいれば、どんな季節だって楽しいよ」
…ああ、もう。
本当にもう、君には敵わない。
涙をにじませて、私は笑う。
まずは、連絡先を交換して。
いろんな季節を、君と過ごして。
君がいる季節は、こんなにも愛おしい。
…どうか、願わくば。
次の夏も、君と。
Fin



