大嫌いだった海も、名前も、この季節も。
君によって、キラキラ輝く。
大切な、大切なものになる。
私の瞳から、ぽろぽろと涙が零れた。
「うわぁぁあん……好きぃ…っ」
子供みたいに泣きはじめた私に、ナツは「泣くなよ〜」と笑う。
好きなんだよ。
…大好き、なんだよ。
君がいる夏が、大好きなんだよ。
「未海」
君が、私を呼ぶ。
君のおかげで好きになれた名前を、優しく、優しく。
ナツは、涙を拭う私を見上げ、目を細めた。
「…いいの?」
…え?
「なに、が………?」
彼は、何処か自嘲するような笑みを浮かべていた。
「…未海の大事な三年間、結局俺がとっちゃったけど。…これからも、俺がもらっていいの?」
目を見開くと、ナツは私の顔を見て可笑しそうに笑った。
「…せっかく可愛いんだから、同級生と恋愛すればいいのに。なんで、夏にしか会えない俺なんだよ?」
一途すぎ、と君が言う。
…なに、それ…?
どういう意味?
…なんで、笑ってるの?
「…ナツ………?」
心臓が、より大きく動き出す。
ばくばくと、音がしそうなほどに。
…それって、さ。
ナツ…
じわじわと涙が出てきて、視界が歪む。



