私が堤防の上に足を置いたとき、ナツがこっちを向いた。
…あ。
ナツが私に気づいて、目を見開く。
けれど、彼はすぐに気まずそうに目をそらした。
「………」
ざわざわと、砂浜にはたくさんの人がいて。
でも私の目には、ナツしか映らなかった。
過ぎる夏の時間が、私を焦らせる。
堤防に両足をのせて立つと、私は口を大きく開いた。
それに気づいた彼が、私を見上げる。
海の空気を、たくさんに吸い込んで。
吐く息と一緒に、放つのは。
「ナツが、好きー!!」
…目を見開く、君に。
精一杯に、愛を込めて。
夏の香りが、海の音が、蝉の鳴き声が。
全てが、こんなにも愛おしくなっていく。
どんな素敵な言葉より、私が君に伝えるのは、この想い。
周りの人々が、ヒュー、と冷やかしをいれて来る。
「未海ちゃん頑張って」なんて声が聞こえてくるけれど。
私は、今にも溢れ出しそうな涙を溜めた瞳で、ナツだけを見ていた。
ナツは少しの間私を見つめたあと、その表情を少しずつ変える。
…変わらない、優しい、真っ直ぐに私を見つめる目を細めて。
口元は、弧を描いて。
「…知ってる」
…キラキラ、だ。
ナツの後ろで、海がキラキラと輝く。
太陽に照らされて、…ああ、なんて綺麗だろう。
涙が瞳を覆うせいかな、やけに君の笑顔が眩しい。



