Summer again with



ほんと下手なクロールだけど、ばしゃばしゃと懸命に足を動かす。

やがて息つぎがうまくいかなくなって、顔を水面から出した。

…あれ?

見ると、そこはさっきより少し砂浜から離れた場所で。

…これって…

ちょっとだけ遠くなった砂浜にいるナツを見ると、明るい笑顔。

…うそ。

泳げたんだ、私。

海で、泳げたんだ…!


ばしゃばしゃと足を動かして、また下手なクロールでもといた場所に戻る。

顔を上げると、眩しいナツの笑顔が、視界に広がった。


『やったじゃん!ちゃんと海で泳げてる』


…嬉しい。

自分の名前が、今すごく好きだと思った。

思わず涙がでてきて、ナツが濡れた頭を撫でてくれる。

…ぜんぶ、ぜんぶ。


『…ナツの、おかげだよ…』

鼻をすすりながら言うと、ナツは目を見開く。

眩しい太陽が照りつけて、私を焼く。

…この季節も、海も。


『好きになれたの。ナツのおかげだよ…っ』


涙を溜めた瞳で笑って言うと、ナツは本当に嬉しそうに笑った。


『俺も、嬉しいよ。夏に、未海が楽しそうで』


…ああ、眩しい。

太陽の光が海に反射して、キラキラと輝いていた。






「……あれ……?」


目を開けると、頬に涙が伝っていた。


…いつの間にか、寝ていたみたいで。

気づくと、壁に持たれて床に座っていた。

真上の窓から、風がさわさわと吹いている。