思わず哲さんを見ると、お茶目なウインクで返してくれた。
男の人たちは、『はぁ!?』と言ってブーイング。
それを気にすることなく、ナツは私の手を引いて店を出る。
…少し伸びた髪と、大人びた表情。
ああやっぱり追いつかないなと、私は優しい気持ちで大好きな夏の空気を吸った。
*
『…ありがと、ナツ』
ふたりで手を繋いで、海岸を歩く。
ナツは『いいよ』と笑ってくれた。
それから、お互いに合格おめでとう、と言い合った。
去年、目標だった連絡先を聞くことは、達成されなくて。
来年の夏笑顔でナツと会うんだ、という気持ちだけで、勉強を頑張った。
そしてやっと高校生になったのに、もうナツは大学生。
私が元気良く話しかけると、彼は優しく答えてくれる。
『あのね、ちょっとだけど、泳げるようになったんだよ!』
今日は、久しぶりに水着を着てパーカーを羽織っていた。
パーカーを脱いで、驚いた顔をするナツに渡すと、私は海に足をつけた。
…大丈夫。
胸のあたりまで水がつかったとき、ナツを見た。
『み、見ててね』
力のこもった言葉で言うと、ナツは優しく笑う。
『溺れたら助けてやるから、安心しろ』
その言葉に唇を噛んで、私は海に顔をつけた。



