『…ナツに、会いに来たんだもん』
じ、と見つめると、ナツはニカっと笑う。
『それは嬉しい。ありがと』
…冗談でも、なんでもないのに。
今年の夏、やると決めたこと。
ナツの連絡先を聞くこと。
…彼に、告白すること。
私はぎゅ、と汗ばむ手を握りしめて、ナツを見つめた。
蝉が、鳴く声がする。
海の音がする。
…会いに、来たんだよ。
ナツに。
『…ナツが、好きです』
今、私はどんな顔をしてるんだろう。
きっとこんな季節に、真っ赤な顔をしてる。
ナツはぽかんと私を見たあと、小さく笑い出した。
……えっ。
『ふはは…っ』
『な、なんで笑うの!?』
真剣に言ったのに!
今度は、豪快に笑い出す。
私は笑われた恥ずかしさとショックで、じわじわと瞳に涙が溜まっていった。
彼は、そんな私を見て『ごめん』と笑いを堪えながら言う。
『ありがと、嬉しい』
…ほら、眩しい笑顔。
だから、私は目をそらしたくなって、でもそらせないんだ。
君のいる季節は、こんなにも綺麗なものだから。
私はむぅ、と頬を膨らませる。
『…本気、なんだからね』
『わかってるわかってる』
…中学生の告白なんか、やっぱり真面目に聞いてはもらえませんか。
でも、本気なんだよ。
ほんとに、大好きなんだよ。



