先生は、本当にズルい。


耳元でそう言われてしまえば、信じるしかないじゃない。


だけど、その言葉だけで安堵して、涙が止まらなくなるあたしは、本当にどうしようもない。


「この前俺のシャツ濡らしてまで泣いたのも、それか?」


ちょっと危ない笑みを浮かべて、先生はあたしに目線を合わせつつ聞く。


真相が分かってしまった今、あの行動は恥ずかしいものでしかない。


頷くなんて、できないっ。


「・・・ふーん。かわいいとこあんじゃん。」


何も反応してないのに、先生は勝手に納得した。


「じゃあ、俺も言わせてもらう。


・・・俺の特別である以上、他の男に尻尾振ったりすんじゃねぇ。」


グッと顔を近づけて、迫力のある声を出す。


「尻尾!?」


思わずお尻のあたりを確認してしまう。


あたしがいつ、尻尾なんか振ったって言うのよ。


「分かった?」


全然分かんないけど、あんまり男子と関わりを持たないしと、とりあえず頷く。


「・・・よし。」


まるで犬に言うみたいな口調で言って、先生はあたしから距離を取る。


「もう真っ暗じゃねぇか。帰るぞ。」


ぶっきら棒に言われても、今はもう怖くもない。


・・・嬉しい思いの方が勝ってるから。