すっと腕が伸びて来て、あたしの右手を掴んだと思えば、瞬く間に引き寄せられて肩を抱かれていた。
「約束守らねぇような女じゃねぇだろ、お前。」
そっと横顔を盗み見れば、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
・・・そう。
あたしがさっさと去らなかったのは、先生との約束があったから。
″花火は俺と見ろ″
一方的な命令に近いけど、あたしが頷いたのも確かだし。
「・・・ま、そうじゃなくたってお前は逃げなかっただろうけど。」
「え?」
言葉の意味を聞こうとしたとき、ドンっという音と共に窓の外が明るくなった。
「あ・・・。」
次々と上がる花火は、赤や黄色、緑や青など華やかな色を付けては消えていく。
それに合わせるように、あたしたちにも影ができたり消えたりが繰り返される。
「綺麗・・・・・。」
去年も見たはずなのに、こんなに目を奪われるのも、だんだん心臓が鼓動を早めるのも、隣に春市先生がいるから・・・?

