相変わらず満面の笑みの柏木くんは、先生にお礼を言ってあたしから離れた。
「柏木、焼き増ししてやるから楽しみにしとけ。」
ニヤッと笑いながら先生は教室出て行った。
「・・・ごめんな、杏ちゃん。」
「え?なんで・・?」
さっきまで締まりのなかった顔は、いつのまにか真剣なものになっている。
「俺のわがままで無理やり写真撮らせてもうて・・・イヤやなかった?」
まるでお母さんに叱られている子供みたいな顔で、少し上目使いな彼の言葉に、思わずキョトンとしてしまう。
「・・・・全然、イヤじゃ・・・ないけど・・。」
どうしてそんなことを聞いてくるのかが分からなくて、言葉が詰まるけど、あたしの言葉でまた彼の顔が明るくなる。
「良かった!!あの写真、オレ一生宝物にすんで!!」
また眩しい笑顔を向けてくれたから、細かいことは気にしないことにする。
「・・・・・おい、あんこ。」
ルンルンしながら友達の元へ去って行った柏木くんを微笑みながら見送っていると、後ろから不機嫌な声がした。
「・・・なんですか。」
途端に、さっきのステージで感じた胸の奥の痛みが思い出される。
それに、今の今まで女子たちに囲まれてやれ写真だの質問大会だのされてたくせに不機嫌てなに。

