それでもいそいそとあたしの隣のいすに座った彼からは、ほんのりソースの匂いがする。
「じゃ、柏木に邪魔者にされるのも癪だし、あたしはちょっと出てくるね。」
なんておどけながら珠樹が出店を出ていく。
「なんや、珠ちゃんってばいいとこあるんやな。」
満更でもなさそうにニコニコする柏木くんを見ていると、ちょっと疲れが癒された気がした。
「サッカー部は、焼きそばでも出してるの?」
「え!!なんで分かるん!?杏ちゃん天才なん!?」
大袈裟すぎるような反応を取って、いすから立ち上がる彼にクスッと笑いを漏らす。
「柏木くんのTシャツ、ソースの匂いするから。」
「え、あ、ほんまや・・・。ずっと焼きそば作ってた。」
ちょっと照れくさそうに自分のTシャツの匂いを嗅ぐ。
「この匂い、イヤ?だったら着替えて来るけど・・・。」
あたしから少し距離を取って、おずおずと聞いてくる姿は、まるで子供だ。
「ううん、ちょっとお腹減りそうだけど。嫌いじゃないから大丈夫。」
にこりと笑いかければ、ほんのり顔を赤くしながら良かったと呟いた。
「杏ちゃんに嫌われたら、オレ生きて行けへんし。」
そっと元のいすに座りながらしれっとそう言うから、こっちも顔が赤くなる。
本気で言ってるのが伝わるから、悪い気はしないんだけどね。

