「ちょ・・・。」
足で机の縁を蹴って、椅子ですーっと器用にこっちへ迫ってくる。
今度は地面を軽く蹴って椅子を回転させるとあたしの腕をぐいっと引く。
それは当然、先生と向かい合うように先生の膝の上に乗る形になるわけで・・・。
「っ・・・・。」
こんなに至近距離で人の顔を見たことなんかないから、心臓がものすごい音を立てる。
おまけに先生の手が腰に回ってキュッとあたしの体を引き寄せるから、一段と顔が近くなる。
バクバクドキドキとうるさいくらいに鳴る心臓は、きっと先生にも聞こえてる。
でも、これは決して先生の顔立ちの良さに対してではなく、この状況、この距離に対してのもの。
うん、絶対にそう。
なにが悲しくて先生にドキドキしなきゃなんないのよ。
心の中で必死に自分に言い聞かせても、心臓は鳴りやまない。
「・・・顔、赤いぞ。たこみてぇ。」
囁くような声でバカにして、ふっと息を漏らして笑うから、顔に息が触れる。
・・・また、心臓の音が大きくなる。
「あんこ・・・やっぱ面白れぇわ、お前。」
ぐっと顔を寄せて、耳元で艶っぽく言われてさらに顔の温度が上がる。
ククッと喉を鳴らすように笑う声を聞いて、不意にデパートでの光景が蘇った。

