いや、でも本当にそうだろうか?
逃げようと思えば、逃げられた。
音楽室から出て他の先生に助けを求めることも、しようと思えば何でもできたはずだ。
それをしなかったのは、確かにあたしで。
無意識にあたしは、先生を受け入れてたってこと・・・?
「ねぇ杏子。あたしがこう言ったからって、自分の中で先生の事好きだって決めつけちゃダメだよ。
無責任っぽくてごめん。でも、あたしはあんまり賛成しない。これだけは、最初に言っておくね。」
しっかりあたしの目を見て、珠樹は言い切った。
「・・・うん。」
まだ気持ちの整理がついてないけど、あたしだって先生相手に恋するほどバカじゃない。
それがどれだけ辛くて大変なことか分かってるから。
「ほら、杏子には柏木くんがいるじゃん。」
「え?」
「なんだかんだ、あいついい奴だと思うけどなぁ。」
ニコッと悪戯っぽく笑った珠樹の目からは、あたしを心配しているのが伺えた。
「・・・そうだね。」
少し控えめに笑いながら肯いて、ほとんど冷めているワッフルを口にした。

