ここから先生の顔どころか姿すら見えないけれど、声は確かに聞こえた。
″花火は俺と見ろ″
確かに、先生の声は、そう言った。
完璧に思考の停止したあたしを不審に思ったのか、先生が姿を現す。
煙草はすでに灰皿で潰してきたのだろう、手にはなかった。
「聞こえた?後夜祭の花火。俺とな。」
言いながら先生の顔は近づいてきて。
「・・あっ・・・。」
ツーっと先生の指があたしの頬を伝って顎にかかる。
「返事、は?」
「あ・・・はい・・・・・。」
あまりよく働いていない頭に先生の言葉が入って来て、反射的に肯く。
あたしの返事を聞けば、先生の手は離れて行き、姿も奥へと消えた。
どこをどう通ったのか、あたしは気づけば帰路に就いていた。
どうして、あんなに動揺したのか自分でも分からない。
あまりにも不躾な展開だったからか、常識ではあり得ないセリフだったからか。
・・・どちらにしても、嬉しかったことには変わりないのだけれど。

